Vol.17

第3巻『幻影城の奇術師』は、良質のエンタテインメント・ミステリー!

梶原秀夫(ノアズブックス 出版プロデューサー)



カタログNO.3の「プロローグ」をお読みになった方は、この意表をつく出だしに驚かれたのではないでしょうか。僕も正直、びっくりしました。

いきなりグランドキャニオンから始まるとは……。しかも、新名所スカイウォークをしっかり取り上げているところは、さすが吉村達也です。

聖橋博士の蘊蓄(うんちく)にも驚かされますが、高所恐怖症の僕でも、またグランドキャニオンに行ってみたいと思いました。



さらに、いいところは大自然のグランドキャニオンのそばにありながら、好対照の人工都市ラスベガスを舞台にもってきているところです。

ラスベガスには一度しか行ったことはありませんが、ギャンブル好きの僕がまったくギャンブルをしないで、ショーばかり見ていたので、同行した家人が驚いたほど。

昼間は宿泊したホテル・ベラージオのプールサイドにあるカバナで過ごし、夜はショー三昧の日々。大好きなマジシャンのランス・バートン、シルクドソレイユの原点とも言うべき「ミステール」、ステージが一瞬のうちに巨大なプールになる「O(オー)」などなど……。もう一度行きたいラスベガスです!



 

だからというわけではないのですが、今回の主要登場人物がそこで定期公演をしているイリュージョニストという設定には、僕自身、本当に興味をもちました。 

このノブ・オダという名前がいい。メジャー感があります。カバーのイラストがその彼というのも驚きを超えて、吉村マジックに思う存分酔いしれました。



今回は、氷室想介最愛の人である川井舞が事件に巻き込まれてしまうのも、見どころというか、読ませどころのひとつになっています。この後、氷室と舞の関係はどうなっていくのか……。

いくつもの謎を散りばめながら、物語が進んでいくと、読み手としては途中で止めることができません。この本の最初の読者として、本文の校正をしていた僕は、まさしくそうでした。



幻影城の奇術師ノブ・オダのイリュージョンを見てみたい!

この作品こそ、エンタテインメント・ミステリーと呼ぶに相応しい! 

僕がそう思ったように、読了後、同じ思いを抱く人が多いことでしょう。

Catalog No.3

「魔界百物語」作品紹介カタログ  No.3


【目次】
・P1   「魔界百物語3」SEASON I『幻影城の奇術師』
・P3   『幻影城の奇術師』プロローグ
・P12 幻影城の奇術師』第一章
・P19 「魔界百物語4」SEASON I『殺人者の舞踏会』発売告知


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Vol.16

リレー・ノート⑭ 流氷とカニの食べ放題バスツアー
吉村達也



前回、梶原さんが文章の中でふれた「北海道バスツアー」というのは、二泊三日で北海道の知床へ冬の流氷を見にいくバスツアーでした。

もちろん東京から北海道までは飛行機です。向こうに着いてからはバスでの移動でしたが、これは『知床温泉殺人事件』を書くための取材旅行。

あえて激安バスツアーというものを取材してみようということで梶原さんを誘ったわけですが、いきなり初日に連れていかれた某湖のそばの某温泉旅館の「カニの食べ放題」は印象的でした。

よくもまあ、こんな中身がスカスカのカニばかり集められたな、と(笑)。これならカニの食べ放題つきの激安ツアーが成立するわけだと納得でした。



ところで、ちょっと話が飛びますが、道頓堀の「かに道楽」は、あの動くカニの看板で知られるご当地のシンボルですが、同店には「網元」という「かに道楽の奥座敷」というキャッチフレーズで呼ばれる別ブランドがあり、これは、たとえば焼肉の「叙々苑」と「游玄亭」の関係に相当する、ワングレード上の店でして。

「網元」の方が「うちは『かに道楽』よりワンランク上のカニを使っています」と胸を張っておっしゃるとおり、たしかに「かに道楽」もたいへんおいしいけれど、「網元」は味だけでなく、ホスピタリティも含めて、一段上をいくことは間違いなし。

網元は大阪だけ(心斎橋)に本館と別館がありますが、東京にもできるといいですね。



話が脱線しましたが、北海道某所でのカニ体験は、まさにその正反対をいくもので、これで私も梶原さんも、「カニ食べ放題」には安易に手を出すなという教訓を得たわけです(笑)。

実際、北海道まできたら、安くておいしいカニが市場にいくらでもあるわけで、なにもわざわざスカスカ食べ放題にいくこともなし。



さて、このツアーの目玉である砕氷船「がりんこ号」に乗って流氷の海に繰り出す体験はすばらしいものでした。

暖冬で、年々流氷ツアーもスケールダウンしているそうですが、やがてこれも失われゆく過去の風景になるのかもしれません。